スティング&トゥルーディー・スタイラー夫妻の5つのお気に入り
セレブリティカップルが所有するトスカーナ地方の別荘&ワイナリー

夫妻のプライベート・アパートメント。PHOTO: BEPPE BRANCATO

PHOTO: JAIME TRAVEZAN
ロックバンド「ポリス」のリードヴォーカルを務めたスティングさんと、妻で女優のトゥルーディ・スタイラーさんは、15年以上前にイタリア・トスカーナ地方にヴィラ「イル・パラージオ」を購入した。緑に包まれた邸宅で2人は時間をかけてゆったりと食事を摂る。樫の大木からは鳩のさえずりが聞こえ、家の中はオーブンでローストしている新鮮な野菜の香りで満ちている。
「胎児のように体を丸めて深く呼吸していると、日々の生活の中での精神的な重荷がすべてすとんと落ちて、このヴィラがもつ恵み深い存在に優しく包みこまれているような、晴れ晴れとした気持ちになります」とイギリス生まれのスタイラーさんはいう。
ヴィンチェンツォ・ヴェルーティ・ザーティ・ディ・サン・クレメンテ侯爵が暮らしていたイル・パラージオは、現在ニューヨークを本拠とするスティング&スタイラー夫妻が夏の別荘として所有している。キャンティ地方に位置する16世紀のヴィラは、865エーカー(350万㎡)もの敷地を有し、うねるように続くなだらかなトスカーナの丘陵やアペニン山脈を望むことができる。
このイル・パラージオで、スティングは作曲やレコーディングを行い、映画プロデューサー・監督・女優とマルチに活躍するスタイラーさんは戯曲を読む会を開催してきた。
この2人の隠れ家は30エーカーのブドウ畑、約8,000本のオリーブの木、80個のミツバチのコロニーをもち、ビジネスとしても成功している。スタイラーさんは農園チームを率いて、ブドウの収穫からイル・パラージオの名を冠したワインの醸造とボトリングを行っている。環境に配慮した有機農法を実践して作られた高品質なオーガニック・オリーブオイル、蜂蜜、ワインは世界中で販売されている。またこのヴィラと農園は、結婚式、イベント、休暇滞在などのためにレンタルすることもできるのだ。
我々のインタビューに対し、スタイラー氏は、夫妻がイル・パラージオで最も気に入っている5つを教えてくれた。
1. 夫妻のプライベート・アパートメント

「私たちの私室は母屋の1階にあります。非常に広い、縦長の部屋です。最近、内装はインテリアデザイナーのアクセル・フェルフォールドに仕上げてもらいました。彼はいつも地元で採取した顔料を使いますが、選ぶ色は地域色を強く意識したものばかりです。土地から取った土を顔料に混ぜることで、多彩なトーンのアースカラーが生まれます。この色合いが部屋の雰囲気と実に良く合うのです。家の中にいても、外にいるのとあまり違わないような印象を受けるでしょう?その理由は全く同じ環境にいるからです。ここに飾っている作品は全て自分たちで選びました。どれも思い入れがある物ばかりです」
「ここはスティングと私だけの場所なので、素敵なベッドルームに、バスルームはそれぞれ1つずつ。ワードローブも1つずつ。私のワードローブの方がずっと大きいですけど!」
2. 牡羊の角をもつ木の彫刻

「スティングと一緒にツアーに出ていた時、ベルリンの小さな店で、才能溢れる彫刻家、フリードリヒ・ミヒャエル・シュライバーの作品に出会いました。素材は白樺だと思います。彼は木から落ちた大きな枝を使って、ギリシア神話の牧神パーンのような生き物を彫っていきます。その制作途中の枝に牡羊の角を接着してみると、木の精霊ドリュアスのような男性の姿が浮かび上がってきたというのです。私たちは彼の作品を3点所有していますが、どれも本当に気に入っています。この家にぴったりだと思いますよ」
3. 庭の噴水
「この噴水は、かつてソフィア・ローレンと夫のカルロ・ポンティが所有していたものです。彼らのローマの家から盗まれたそうですが、あまりにも大きいので、どうやって盗んだのか想像もつきません。その後どういうわけかロンドンのアンティーク商の手に入ったということです」

「庭は、英国屈指のランドスケープデザイナー、アラベラ・レノックス・ボイドにお任せしています。イタリア式庭園をデザインしていて、何かセンター・ピースが欲しいと思っていた時のことでした。悩んだ末に、私が噴水を置くべきじゃないかしらと言うと、彼女は1つだけしっくりくるものがあるといいました。それがこの噴水です。キングスロードの店で長い間売りに出ていたので、私たちはロンドンに出向いて、少し値下げしてもらうよう交渉しました」
「どうしてこの噴水が長い間売れなかったかというと、実際の価値に比べて、価格が高すぎると思われていたからではないかと思います。でも私は言い値だけの価値があると思いました。もともとこの噴水は、ヴィラから車で50分ほどの、シエナ近郊で作られました。私たちは毎年シエナで行われる競馬「パリオ」を観に行きますが、そこにこの噴水を支えているのと同じ白い牡牛が実際にいるのです。それを知って私は、巡り巡って元の場所に戻るというのは、本当にあるものだなと感心しました。大理石が掘り起こされ、彫刻が施されたこの地に、長い年月を経て再び帰ってきたことを思うと感慨深いものがあります」
4. 中庭の照明

「私たちはいつもこの中庭で食事を摂ります。夜になると大抵、テーブルと椅子がセットされます。ディナーの場所としては一番のお気に入りです。ここにある照明を初めて灯したのは、2011年9月11日のことでした。あの日は私たちにとって喜ばしい一夜となるはずでした。スティングはここで世界中からやってきたファンに感謝の気持ちを伝える特別なコンサートを開いていました。イタリアまで来ていただいたファンの皆様を無料でコンサートに招待したのです。その日は250名くらい集まっていたと思います。もちろん、私たちの誰も、その直後にニューヨークのツインタワーに恐ろしいことが起こり、さらなる悲劇が続くとは思ってもいませんでした」
「あの夜私たちは一人の親友、ハーマン・サンドラーを亡くしました。彼を記念してここの照明は常時つけたままにしています。ハーマンは素晴らしい友人であっただけでなく、私たちの熱帯雨林基金「レインフォレスト・ファンデーション」の大切な貢献者であり、支持者でした。あの日私たちはお祭り騒ぎをしようとここに集まりましたが、あのような悲劇的な出来事が起きてしまいました。ですから私たちはこのイル・パラージオで、自分たちだけの追悼式を行っているのです。私はここに座り、ただハーマンのことだけを考えている時間を大切にしているのです」
5. 伝統的なオープンタイプの暖炉があるキッチン
「家の中にいると、美味しそうな料理の匂いがキッチンから漂ってきます」「オーブンでは一日中いつもなにかしら料理されています。果物のコブラーなら、ガスの火で焼ける果物の香り。野菜なら野菜の香ばしい匂い。暖炉に薪をくべ、その上にグリルを載せることで、熱が逃げないようになっています。私たちは自分たちが食べる野菜を毎日、冬でも夏でもこのグリルでローストしています。外の気温が30度を超える暑さでも、フレッシュで美味しいローストベジタブルを楽しんでいます」
