Designer's Corner

富裕層がこぞって 高級物件を購入する テキサス・トライアングル

米ヒューストン、ダラス、オースティンの3大都市で形成される「テキサス・トライアングル」では、高級物件を購入する富裕層の流入が急速に活発化している。

by Michele Lerner 2020430

オースティンのコマンチェ・トレイル通りに あるウォーターフロント物件の掲載価格は 1490万米ドル(約16億円)。PHOTO: TRAVIS BAKER WITH TWIST TOURS

“テキサス・トライアングル” 広さと都市生活を求める超富裕層に人気

米カリフォルニア州オレンジ郡からテキサス州オースティンに引っ越してきたばかりのダネル&ロン・レイマー夫妻は、大都会でありながら、過不足ない小さな街のようなオースティンの街の雰囲気に魅せられたという。

「私たちは生粋の都会人というわけではありませんが、オースティンはとても気さくで親しみやすく、気軽にあちこち行けるので大変気に入っています」とダネル・レイマー氏。「ダウンタウンの近くにありながら、プライバシーと景観も確保できるセブン・オークス地区の家を買いました」。

レイマー家が200万米ドル(約2億1700万円)強で購入した9000平方フィート(約836平方メートル)の邸宅は、アーチ状のエントランス、随所に見られるタイルや石の使い方そして天井の木の梁などが南カリフォルニアのスタイルをイメージさせるという。

「広々としたスペースと、個性豊かな建物のデザインも気に入っています」とダネル夫人は語る。

世界的な金融サービス会社に勤めるレイマー氏の仕事の関係で引っ越しをしたレイマー家のように、この数年間にヒューストン、ダラス、オースティンの3都市を三角形の頂点とする「テキサス・トライアングル」に居を移した富裕層ファミリーは数多く存在する。富裕層に関する調査を行う「ウェルスX」がまとめた「2019年ウェルス・リポート」によると、ダラス・フォートワース-アーリントン大都市圏は、超富裕層が居住する、世界の都市ランキングで第10位に位置している。またrealtor.comによると、昨年このトライアングル地域でもっとも高い物件価格の中央値を記録した郵便番号の一つはダラスの「75225」で、2019年1月〜8月の中央値は122万米ドル(約1億334万円)、前年同期と比較して4.1%の上昇を記録した。ヒューストンにある郵便番号「77005」のエリアでは、同時期の住宅購入価格の中央値は110万米ドル(約1億2100万円)で前年同期比8.3%の上昇、またオースティンの郵便番号「78746」地区では、同時期の購入価格の中央値は前年同期比で2.2%上昇し、83万米ドル(約9100万円)と同市内で最高額を記録した。

ブレナムにあるマークル氏邸の裏庭の眺め。

テキサス・トライアングルに居を移す富裕層

不動産売買企業「コンパス」をオースティンに構える「オースティン・ラグジュアリー・グループ」のオーナー、ゲリー・ドルチ氏によると、同市の高級住宅市場で活発な購入者層の多くは、北カリフォルニアをベースにする富裕層だという。

「オースティンで高級物件を購入する場合、例えば『サウス・バイ・サウスウエスト』やテック関連イベントで訪れたのをきっかけに、検討を重ねて別荘として購入する層が数多くいました」とドルチ氏は語る。「今は、こうした購入者層が引っ越しをして定住するようになっています」。

テキサス州では州の所得税を徴収しないことも人気の一因だとドルチ氏は付け加える。

「テキサス州は税率が低いので、カリフォルニア州から引っ越しただけで36%の賃金アップと同等の節税ができた人もいます」とドルチ氏。

また、オースティンにはシカゴからの移住者も増えている。テック業界関係者や、厳しい冬の寒さからは逃れつつも、友人や家族に会うため定期的に飛行機で地元シカゴに帰省したい退職者層などが含まれるとドルチ氏は説明する。さら「ここ12カ月の間には、ニューヨークからオースティンに移って新しく事業を始めるベンチャー起業家やディベロッパーの数が増えています」とドルチ氏は言う。

ダラスに近いテキサス州フラワー・マウンドにある不動産仲介業社「バークシャー・ハサウェイ・ホームサービシズ・ペンフェッド・リアルティ」のラッセル・ローズ氏によると、ダラスの北に位置する地域、特にフリスコ地区では、ステート・ファームやリバティー・ミューチュアル、トヨタなどの大企業の経営幹部たちが会社機能の移転に伴って居を移してきていると言う。

またローズ氏によると、ダラスやフォートワース周辺にある別のエリアで、数百万ドル規模の不動産を購入している層は、会社経営者やテック企業の上層部、石油・ガス会社の重役のほか、プロのアスリートやカリフォルニアからの移住者が中心だと言う。

「ダラスは成長途上の街です。広大な土地と水辺の景観があり、しかも都市生活や文化施設にも距離的に近い物件が手に入ることが人気の理由です」とローズ氏。

テキサス州ブレナムのコールドウェル・バンカー・プロパティーズ・アンリミテッド社に勤め、グローバルな高級物件の仲介を行うトニア・カリー氏によると、ヒューストンから1時間、そしてオースティンからは車で2時間の距離に位置し、牧場や別荘が多く建ち並ぶブレナムで高級物件を購入する層の多くは、この2つの街に近いロケーションに居を構えたいと考える地元の住民たちだという。

「オースティンとヒューストンはどちらも経済が順調に成長してきたおかげで、成功した経営者たちがこれらの街に引っ越してきました」とキャリー氏は言う。

キャリー氏はさらに、テキサス州の政治家たちも、週末にゲストをもてなすため、オースティンとヒューストンに近いこのエリアに別荘を購入していると付け加えた。

「ブレナム地区にある高級物件の購入者は、いわゆる“ウィークエンド・ランチャー”(週末牧場主)で、50~200エーカー(約20~81ヘクタール)規模の土地を探しています」と、コールドウェル・バンカー・プロパティーズ・アンリミテッドのバイスプレジデント兼最高執行責任者(COO)であるケリー・ブレナン氏は説明する。

「現金で購入する人が大半を占めています。石油・ガス会社の重役もいますし、経営者もいます。注文住宅を購入して数年後に売却するカリフォルニア州やニューメキシコ州の投資家も多くいます」とブレナン氏。

敷地内で牛やミツバチを飼育したり牧草を育てたりすることで、農業従事者として税制上の優遇措置が適用される場合もあるとブレナン氏は付け加えた。

コマンチェ・トレイル 通りにある17800平方フィート(約1700平方メートル)のウォーターフロント物件。

必須条件は“おもてなし”のための広い空間

テキサス・トライアングルのどのエリアを選ぶにしても、高級住宅の購入層の大部分が共通のテーマとして挙げるのは、ゲストをもてなすための空間、特にアウトドアスペースである。

ヒューストンにある宝石店「トマス・マークル・ジュエラーズ」のオーナー、トマス・マークル氏は、ブレナムにある50エーカーの「ヒドゥン・スプリング・ランチ」を最近購入した。マークル氏によると、50エーカーほどのサイズの方が、同エリアにある200~300エーカーの牧場よりもずっと管理しやすいという。

「(ヒューストンの)ザ・ウッドランズにある自宅のほかにも、マウイ島やコロラド州に別荘を持っていました」とマークル氏。「ヒューストンからたった1時間なのに、見渡す限り丘が続く美しい風景と小さな街の雰囲気を併せ持つブレナムの街の郊外は、テキサス州の中でもユニークな存在です。私はここの家を週2~3日は訪れています。気が向いたらすぐに行けるような別荘が欲しかったんです」。

マークル氏は160万米ドル(約1億7500万円)で同物件を購入した後、20万米ドル(約2200万円)をかけて納屋を改築し、バンドが演奏できるステージとダンスフロア、ハイテクカラオケ機器を備えた本格的なバーへとリノベーションを行った。また車8台分のガレージをゲストハウスに作り変えて、家族や友人を招いてはプールや屋外の暖炉の周りで団らんを楽しんでいるという。

「テキサス・トライアングルでの物件購入者は、豪華な農家風の建築を好みますが、それだけでなく広大な土地、ナラの木の森、雄大な景色そして池などがある牧場の雰囲気も求めています」とブレナン氏。「つい最近も『ストーン・ブリッジ・ランチ』という440万米ドル(約4億8200万円)の物件が買い争われました。147エーカー(約60ヘクタール)の敷地にある7つの池には橋が架かっていて、まるで公園のようです」。

「今売りに出ている規模の小さめの物件は、サマービルのFM 1361通りにあります。19エーカーの敷地に、湖と小川、そしてスパを備えたインフィニティプールがあります。週末を過ごすのにぴったりのこの別荘の価格は125万米ドル(約1億3700万円)。両面タイプの暖炉が付いた、約3000平方フィート(約280平方メートル)の注文住宅で、夜釣りを楽しめるように湖には照明もついています」 

オースティンにあるレイマー家にも3階建ての高さから噴水が注ぎこむインフィニティプールがあり、屋外でゲストをもてなす際のメインステージとなっている。

「オースティンにはトラヴィス湖という巨大な湖(約80平方キロメートル)があり、湖畔に家を建てることができるので、水辺という立地が大きな魅力です」とドルチ氏。「この湖は、市街地に入るとレディ・バード湖になります。そしてオースティン湖もあります。湖畔の物件の価格はここ数年で急騰しました。数年前までは600~800万米ドル(約6.6~8.8億円)だったのが、今では1200万~2000万米ドル(約13~22億円)になりました。新築の注文住宅なら3000万米ドル(約33億円)の価格帯になるでしょう」

例えば、トラヴィス湖に面した13エーカーの敷地に立つ、コマンチェ・トレイル通り沿いにある1万7800平方フィート(約1700平方メートル)のウォーターフロント物件の価格は1490万米ドル(約16億円)。建設に4年を要し、2012年に完成した建物の各部屋からは、水辺と夕焼けが織りなす絶景を望むことができる。

バートン・ヒルにあるゴルフ場付き高級居住区域内にある7ベッドルームの邸宅の掲載価格は1299万米ドル(約14億円)。

またオースティンのダウンタウンから20分の距離にある、ゴルフコースを備えた高級居住区域「バートン・ヒル」内のポルトフィーノ・リッジ・ドライブにある、約1万7000平方フィート(約1600平方メートル)の注文住宅は、ゴルフコースを眼下に眺めるテキサス・ヒル・カントリーの4エーカーの土地に建つ。1299万米ドル(約14億円)の邸宅には、車14台分のガレージ、11のバスルームと7つのベッドルームのほかに、銅葺きドームのある塔や手彫りの石灰石でできた7つの暖炉を備えている。

ローズ氏が最近170万米ドル(約1億8000万円)で売却した、ダラスのフラワー・マウンド地区にある7200平方フィート(約700平方メートル)の物件は、全室からウォーターフロントの景色が望めるうえ、広大な屋外スペースにはボート用ドックのほか、ゲームルームとAVルームがそれぞれ2部屋ずつある。

ローズ氏は同エリアにある別物件の仲介も行っている。なかでもサミット・ドライブにある物件は165万米ドル(約1億8000万円)で、1エーカーの敷地内に建つ7000平方フィート(約650平方メートル)の邸宅は、噴水と温水浴槽につながる塩水プール、プロ仕様の屋外キッチン、そして2つの滝にバレーボールコート1面も備えている。

「アメリカには、かつてない数の百万長者、億万長者がいます」とブレナン氏。「便利な都会に近く、また広大な土地と牧場風の邸宅を所有するのに最適なエリアという認識が広まった結果、テキサス州は超富裕層に人気のあるロケーションの一つになりました」。

ローズ氏はサミット・ドライブの物件を165万米ドル(約18000万円)で仲介販売している。